レジの鍵が開かないので、本日は休業します。

わたしの学校はアルバイトが禁止です。だからわたしは叔父さんがやっているちいさなスーパーを「手伝う」ことにして、アルバイトのかわりにお小遣いを稼いでいました。
叔父さんのスーパーを手伝うようになって、お金を稼ぐことがどれだけ大変かを思い知りました。お客さんは手伝いの学生さんだからといってヘマをすれば怒りますし、商品を雑に扱えば、叔父さんにも本気で怒られます。仕事場では「店長」ですから当然なのですが、ちょっとヤな感じです。

それからわたしは学校を休むことがなくなりました。以前なら、ちょっと具合が悪いとか何かと理由をつけて学校を休むこともあったのですが、もしもそんな理由でスーパーの手伝いを休んでしまったら、叔父さんに迷惑がかかってしまいます。叔父さんのスーパーは小さくて、叔父さんと叔母さん以外は私しか従業員がいないのです。それに比べたら、学校なんて楽なものですから、少しくらい辛くても行かなきゃなって思うようになったんです。

その日もスーパーを手伝う予定のわたしが、授業終わりにそのまま帰り支度をしていると、突然同じクラスの仲のいい男子に「お好み焼きを食べに行こう」と言われました。わたしが唖然としていると、待ち合わせ時間と場所を書いたメモ用紙を押しつけて、その男子は行ってしまいました。

なにがなんだか分からないまま、わたしは叔父さんのスーパーに向かいましたが、気になる男子のデートの誘いのせいで、仕事もままなりませんでした。もちろん、手伝いを休みにしてもらうなんてできませんから、待ち合わせ場所に行くつもりはありませんでしたが、時間が迫るにつれそわそわしてしまったのです。
すると突然叔父さんが店じまいの支度をはじめたのです。驚いたお客さんが理由を聞くと「レジのカギが壊れて開かないので、今日はもう閉店だ」と言っていました。
きっとわたしの様子を見て気を使ってくれたんですね。「店長」いいとこあるじゃん。